一、試験の背景
全国通訳・翻訳専門資格(水準)試験(以下、「通訳・翻訳資格試験」と略す)は、中国国家人力資源・社会保障部の委託を受けて、中国外文局が実施と管理を行う国家レベルの職業資格試験であり、中国国務院の職業資格目録リストに組み入れられ、全国で統一的に実施される一般向けの通訳・翻訳資格認証制度で、受験者の通訳・翻訳能力とレベルを評価し、認定するものである。
この試験の設立の目的は、通訳・翻訳業界の管理を強化し、通訳・翻訳就職市場の規範化をはかり、通訳・翻訳業界の人材育成を促進し、科学的・客観的かつ公正に通訳・翻訳専門人材のレベルと能力を評価し、それによって中国の通訳・翻訳業界の世界との結びつきをより深め、中国と世界各国との政治・経済・文化・教育などの分野の交流と協力のために、通訳・翻訳の人的資源を提供するものである。
二、試験の効用
通訳・翻訳資格証明書は、中国国家人力資源・社会保障部と中国外文局により連合発行されるもので、就職市場において非常に高い実用的な価値をもつ。
1.中国の国家職業資格制度に組み込まれた唯一の語学類試験である
2017年、通訳・翻訳資格試験は唯一の語学類試験として中国国務院職業資格目録に採録された。
2.中国で最も実用的な価値の高い証明書トップ10 の一つとなる
2016年、『人民日報』などの中国の主流メディアは、通訳・翻訳資格証明書を中国で最も実用的な価値の高い証明書ベスト10にランクインさせている。
3.中国の職称制度に完全に対応する職業資格証明書である
通訳・翻訳資格証明書は中国で通訳・翻訳に携わる者の職称証明書であり、3級通訳・翻訳資格証明書は初級職称(大学の職称等級の「助手」に相当する)となり、2級通訳・翻訳証明書は中級職称(大学の職称等級の「講師」に相当する)となり、1級通訳・翻訳証明書は副高級職称(大学の職称等級の「準教授」に相当する)となり、訳審証明書は正高級職称(大学の職称等級の「教授」に相当する)となる。
4.中国のMTI(通訳・翻訳修士課程)の在学生が必ず受験しなければならない試験である
中国教育部の関連政策では、「通訳・翻訳専攻の修士生で、入学前に2級あるいは2級以上の通訳・翻訳資格証明書を取得していない者は、在学期間中に必ず通訳・翻訳資格試験の2級通訳あるいは翻訳の専門資格試験を受けなければならない」と規定されている。通訳・翻訳資格試験は中国通訳・翻訳修士専門教育学位委員会により、通訳・翻訳専攻の大学院教育管理の品質モニタリングシステムに組み入れられており、大学院生の2級試験合格状況もまた、大学院の通訳・翻訳専攻の教育成果の重要な指標として用いられている。
5.通訳・翻訳資格証明書を取得した者は、中国翻訳協会への加入を申請することができる
中国翻訳協会の関連規定によると、「通訳・翻訳資格試験の3級または2級の証明書を取得した者は、同協会の普通会員の申請ができ、1級或いは訳審の証明書を取得した者は、専門家会員の申請を行うことができる」とされている。
6.通訳・翻訳資格証明書の取得は人員招聘・採用の必須条件或いは優先条件となっている
通訳・翻訳資格証明書は通訳・翻訳人材のレベルを評価する「国家規準」となっていて、多くの機関・企業・事業体、とくに大手通訳・翻訳会社の通訳・翻訳者募集の際には、必ず必要とされる証明書となっている。
7.通訳・翻訳資格証明書は人気都市のハイエンド人材誘致における重要な資格となっている
通訳・翻訳資格証明書は北京・上海などの人気都市のハイエンド人材の誘致、戸籍申請の資格条件となっている。
8.通訳・翻訳資格証明書はプロジェクト入札成功のカギを握る条件となっている
通訳・翻訳資格証明書は、国連や中国政府の多くの大型通訳・翻訳プロジェクト、研究課題の申請に必須の条件とされている。
9.国際的影響力がますます大きくなった中国の職業資格証明書である
通訳・翻訳資格試験は、世界で最大規模の通訳・翻訳類試験であり、中国が初めて海外に試験会場を設けた職業資格試験で、現在、国際的な通訳・翻訳類資格証明書との相互承認を推進している。
三、受験申込み条件
通訳・翻訳資格試験は全社会に向けた職業資格試験であり、一定の外国語のレベルに達したすべての者が、年齢、学歴、キャリア、資格を問わず、希望語種2、3級の受験申込みができる。
通訳・翻訳資格試験は中国大陸の各省・自治区・直轄市すべてに試験会場が設けられ、受験者はどの会場、語種、級別、類別の試験にも出願することができる。
通訳・翻訳資格試験は逐次海外での試験会場開設を進めており、非中国籍の人および外国滞在中の中国人留学生、通訳・翻訳従事者も、最寄りの会場で受験することができる。
四、受験語種と専門家構成、証明書の等級とそれに対応する能力
1.通訳・翻訳資格試験の語種
英語、日本語、フランス語、ロシア語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語、朝鮮語/韓国語の8つの語種が設けられている。そのうち、上半期に英、日、フランス語、アラビア語の1、2、3級の通訳・翻訳試験が、下半期に英語の2、3級の通訳・翻訳、同時通訳の試験、およびロシア語、ドイツ語、スペイン語、朝鮮語/韓国語の1、2、3級の通訳・翻訳試験が行われる。
2. 通訳・翻訳資格試験の専門家構成
合計9つの専門家委員会が設置され、それには8語種の専門家委員会と1つの大学促進委員会が含まれていて、300人近い国内外の政府機関、大学、企業・事業体に属するオーソリティにより構成されている。このほか、通訳・翻訳資格試験にはさらに千人近い専門家からなる試験問題作成、出題内容検討、採点のための専門家グループがある。
3. 通訳・翻訳資格証明書の等級
訳審、1、2、3級の合計4ランクに分けられており、そのうち、訳審の資格証明書は審査・評定の方式で取得され、1級の資格証明書は試験と審査・評定を結合させた方式で取得され、2、3級の資格証明書は試験方式で取得される。
4.資格証明書に対応する能力要求
訳審に対応する能力要求とは、1.博学多識で、中国と関係言語国の文化的背景を熟知し、中国語と外国語の言語的基礎が堅固で、高難度の通訳・翻訳の専門業務を成し遂げることができ、通訳・翻訳の専門業務における重要な難題を解決することができ、重要事項の翻訳原稿の審査・決定能力が高く、あるいは重要な交渉、国際会議の通訳業務を引き受ける能力がある。2.通訳・翻訳姿勢が謹厳で、原文の風格を訳文で表現できる。3.通訳・翻訳の専門理論について深く研究し、通訳・翻訳専門人員を組織・指導して各種の通訳・翻訳業務を立派に成し遂げ、通訳・翻訳人材育成の上で著しい成果を上げている。
1級通訳・翻訳に対応する能力要求とは、1.中国と関係言語国の文化的背景を熟知し、中国語・外国語の言語的基礎が確かであること。2.広い範囲のより難しい通訳・翻訳の専門業務の遂行が可能で、重要な場面における通訳あるいは翻訳チェック業務を行うことができ、通訳・翻訳業務における疑問や難題を解決できる。3.通訳・翻訳の実践あるいは理論についてある程度研究しており、原文に対する理解力が比較的強く、中国語・外国語の表現能力があり、正式に出版された訳著あるいは公開発表されている訳文がある。4.通訳・翻訳の業績が際立っており、3級通訳・翻訳、2級通訳・翻訳などの通訳・翻訳専門人員を組織・指導して、各種の通訳・翻訳業務を完成させることができる。
2級通訳・翻訳に対応する能力要求とは、1.比較的系統だった外国語の基礎知識と通訳・翻訳の理論知識を身につけている。2.単独で専門のある程度の難しい通訳あるいは翻訳の業務を遂行することができ、言葉が流暢で、訳文が正確である。
3級通訳・翻訳に対応する能力の要求とは、1.一般的な通訳あるいは翻訳の業務を遂行することができる。2.通訳従事者は話し合う双方の意思を基本的に表現することができ、発音・イントネーションが基本的に正確である。3.翻訳従事者は一般的な難易度の原文の内容を表現することができ、文法が基本的に正確で、文章が比較的になめらかである。
五、試験科目、方法と時間
翻訳資格試験には「翻訳総合能力」と「翻訳実務」の2科目の試験があり、「翻訳総合能力」試験の時間は120分、「翻訳実務」試験の時間は180分となっている。
通訳資格試験には「通訳総合能力」と「通訳実務」の2科目の試験があり、3級「通訳実務」科目の試験時間は30分でその他の科目は60分となっている。
通訳・翻訳資格試験は中国国内ではコンピューターにより回答するようになっているが、海外の試験会場では、状況に応じてコンピューターでの回答もしくは筆記での回答を選択することができる。
六、通訳・翻訳試験の沿革
2003年、英語試行試験が実施される
2004年、フランス語、日本語の試験が実施される
2005年、英語の同時通訳試験が実施される
通年の出願者数が初めて1万人を超える
2006年、ロシア語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語の試験が実施される
2008年、通訳・翻訳資格証明書とMTI(通訳・翻訳修士学位)とのリンクが実現する
2012年、1級通訳・翻訳試験が実施される
2016年、中国の主流メデイアにより、通訳・翻訳資格証明書が最も実用的な価値の高い証明書トップ10の一つであると評価され、通年の出願者数が初めて10万人を超える
2017年、通訳・翻訳資格試験が唯一の語学類試験として中国国家職業資格目録に採録される
2018年、通年の出願者数が初めて20万人を超える
2019年、海外試験会場が開設された初めての中国職業資格試験となった
2020年、朝鮮語/韓国語の試験が実施される
七、試験の国際化
2019年から、通訳・翻訳資格試験は海外での試験を開始し、ベラルーシ国立大学が初の海外試験会場となった。現在、ロシアのモスクワ、サンクトペテルブルグ、ベラルーシのミンスクなどに試験会場を設置しており、2020年にはさらにシンガポール、マレーシア、タイ、カナダなど多くの国に試験会場を設けている。
2020年から、通訳・翻訳資格試験はさらに、国際的な通訳・翻訳類試験証明書との相互認証を逐次推進している。
通訳・翻訳資格試験は現在、世界の通訳・翻訳界から広く注目されており、試験の公式サイトを通じて試験に関心を寄せている国・地域は160を超える。
付記
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